サーマクールFLX
サーマクールは、6.78 MHzのモノポーラRFを用いた、非侵襲的なたるみ治療機器です。皮膚を切開することなく、真皮から皮下脂肪浅層にかけて制御された熱作用を与えるRF治療として20年以上にわたって世界中で使用されてきました。RFによる熱作用は、真皮コラーゲン線維の収縮、線維芽細胞応答・細胞外基質の再構築、皮下支持構造の収縮に関与すると考えられています。
サーマクールFLXは、先代機種と同じ6.78 MHzのモノポーラRFという基本原理を継承しつつ、トリートメントチップ、照射制御、冷却機構、振動機構が改良された機種です。Total Tip 4.0 cm²による照射効率の向上、AccuREPによる照射ごとの自動調整、冷却と振動を組み合わせた疼痛軽減機構などにより、より安定した治療設計が可能となっています。
サーマクールFLXは、顔貌を大きく変化させる治療ではありません。外科手術のように皮膚やSMASを直接移動させる治療ではなく、RFによる電場駆動性の熱作用を介して、真皮・皮下脂肪浅層・線維隔壁を含む支持構造に収縮とリモデリングを促す治療です。
そのため、適応となるのは、重度のたるみを一度で改善することを希望される方ではなく、皮膚から皮下浅層にかけてのゆるみ、フェイスラインのもたつき、頬下部のたるみ、軽度から中等度の輪郭の不明瞭化に対して、自然な引き締めを希望される方となります。
サーマクールは、米国FDAの510(k)クリアランスを受けているRF治療機器です。日本国内では医薬品医療機器等法上の承認を取得していない医療機器に該当するため、当院では自由診療として、医師の責任のもと使用しています。

適応、症状
サーマクールFLXは、以下のような症状に適しています。
・頬下部のたるみ、ほうれい線周囲のもたつき
・フェイスラインの不明瞭化
・下顔面の重さ、ジョール、二重顎様のたるみ
・皮膚のハリ、弾力の低下
・頬や口周囲の軽度から中等度のゆるみ
・真皮から皮下脂肪浅層を中心とした引き締めを必要とする場合
重度の皮膚余剰や脂肪下垂があるケース、SMAS層以深の構造的下垂が主体のケースでは、サーマクールFLX単独では十分な効果が見られない可能性があります。
ケースに合わせて、他の治療や組み合わせ治療をご提案する場合がありますが、基本的に単体の治療効果を一つ一つご自身で検証しつつ、治療を計画をご検討されることをお薦めいたします。
サーマクールの特徴
6.78 MHzモノポーラRFによる熱作用
サーマクールFLX、6.78 MHzの容量結合型モノポーラRF機器です、
RFエネルギーは、治療チップ、カップリング媒体、皮膚、皮下組織、リターンパッドへと至る電気的経路を介して組織へ伝達されます。本機は、表皮を冷却しつつチップから組織へRFエネルギーを伝達するとともに、皮膚との接触状態を常時モニターし、組織インピーダンスに応じてRFのチューニングをパルスごとに行っています。
RF治療の結果は「何MHzのRFを照射したか」だけでは決まりません。
実際の温度分布は、電極構造、チップ接触、カップリング状態、接触インピーダンス、組織インピーダンス、導電率、誘電率、熱伝導率、血流、表皮冷却、照射密度等、多くの因子により規定されます。
つまり、RF治療を行うにあたって留意すべきことは、周波数や表示出力といった単一の指標ではなく、個々の顔面解剖と組織の構成を前提に、電場分布、発熱密度、冷却条件、熱拡散、温度時間履歴を統合的に考慮しながら機器を調整し、慎重に手技を行うことだと考え、実践しています。
Total Tip 4.0 cm²による照射効率の向上
サーマクールFLXでは、顔・体用のTotal Tip 4.0 cm²を使用します。
従来のTotal Tip 3.0 cm²と比較して照射面積が広く、より効率的に治療範囲をカバーできます。
しかし、Total Tip 4.0 cm²の意義は単なる時短ではありません。容量結合型RFでは、電極面積そのものが電場形成に関わるため、チップサイズが変わると組織内の電場分布、電流密度、辺縁部での電場集中、熱拡散のパターンも変化します。有限面積の電極では、中央部と辺縁部で電場は均一ではなく、辺縁ではfringing fieldによる電場集中が生じます。電極が大きくなると、面積に対する辺縁の影響は相対的に小さくなり、1ショット内のエネルギー分布やショット同士の重なり方も変わります。
また、電極面積が大きいこと=「より深く届く」「より強く効く」ではありません。実際の熱作用は、電極面積だけでなく、出力制御、組織インピーダンス、接触状態、表皮冷却等の要因で決まります。
サーマクールFLXは、Total Tip 4.0 cm²による照射面積の増加に加え、AccuREPによる自動調整や冷却機構が密接に統合されており、極めて合理的な制御システムを有する治療プラットフォームだと言えます。
*メーカーは、サーマクールFLXの詳細な電場分布図や制御アルゴリズムを公開していませんので、一般的な解説となりました。
AccuREPによる照射ごとの自動調整
サーマクールFLXには、AccuREPと呼ばれるパルスごとの自動キャリブレーション機構が搭載されています。
RF(高周波)治療において、機器側の設定出力・エネルギーレベルがそのまま組織の熱エネルギーに変換されるわけではありません。RF発生器から組織に至る電気的経路内には、インターフェイス、解剖学的構造、温度の変化等、多岐にわたる要因が「インピーダンス(電気抵抗)」として介在し、ショットごとに実効負荷を変化させます。つまり、同じ設定で照射しても、チップから組織へ結合するRFエネルギー、電流密度分布、局所発熱密度はショットごとに微細な差異が生じます。
AccuREPの意義は、このようなパルスごとの負荷変動を前提に、接触状態およびインピーダンス条件を評価し、エネルギー伝達の再現性を高める点にあります。簡単に述べると、チップと組織が形成する複合的な負荷条件に対し、RFエネルギーが最も効率的かつ安定して結合(カップリング)するように、照射パラメータをパルス単位で最適化(Fine-tuning)する機構と言えます。
特にFLXで採用されたTotal Tip 4.0は、従来のチップ(3.0cm²)に比べ電極面積が33%増加しています。電極面積の増加により、治療場の空間スケールは広がり、治療効率は上がりますが、接触面全体の均一性、辺縁部での電場集中、インピーダンスの局所差が治療場に与える影響も無視できません。AccuREPは、このような広い接触面を前提としたRF負荷条件の変動を、照射ごとに補正するための制御因子の一つと言えます。
ただし、AccuREPは治療結果を保証し、術者の判断を不要にする機構ではありません。臨床的な効果を得るためには、機器側の制御だけでなく、個々のケースのたるみの構造に応じた照射設計が必要となります。

即時的効果
RFによる熱作用により、真皮および皮下脂肪浅層のコラーゲン線維が収縮し、治療直後から軽度のタイトニングを感じることがあります。
ただし、直後の変化には、即時的なコラーゲン収縮だけでなく、熱による組織の緊張、軽度の浮腫、局所循環の変化も含まれます。そのため、治療直後の見た目をもって最終的な治療効果であると判断することはできません。
長期的効果(本来の効果)
サーマクールFLXの本来の効果は、治療後数週間から数か月をかけて進行する組織リモデリングです。
熱刺激により、真皮線維 芽細胞応答、コラーゲンリモデリング、細胞外基質の再編成、線維隔壁の収縮が生じると考えられ、臨床的には、皮膚のハリ感の改善、顔面・顎下のタイトニング効果が期待されます。
一般的に、治療後1か月頃から効果が現れ始め、3か月前後で最大化します。効果の持続については個人差がありますが、半年から1年程度を目安に次回治療を検討します。
フェイスライン、下顔面、頬下部への作用
サーマクールFLXは、真皮だけではなく、皮下脂肪浅層、線維隔壁、皮膚支帯(retinacular cutis)を含む支持構造にも熱作用を及ぼします。そのため、特にフェイスラインの不明瞭化、下顔面のボリューム感、口横のもたつき、顎下の軽度なたるみに対して適応となります。
一方で、脂肪量が少ない方、頬がこけやすい方・頬骨下の陥凹が目立つ方では、照射部位と照射密度を慎重にデザインする必要があります。サーマクールは脂肪を溶解する治療ではありませんが、浅層皮下脂肪および線維隔壁への熱作用により、結果として頬中央部のボリューム感が変化したように見える場合があります。
当院では、頬がこけたような印象を与えないように、かつ自然なタイトニングが感じられるように注意深く照射設計を行っています。
肌のハリ、毛穴、皮脂への副次的効果
真皮への熱作用により、肌のハリや毛孔の開大に対して副次的な効果を認めることがあります。
ただし、サーマクールは毛孔やニキビ・ニキビ痕の改善、または皮脂コントロールを主目的とする治療ではありません。それらの改善を企図する場合には、薬物療法やジェネシス、フラクショナルレーザー等、目的に応じた他の治療をご提案する場合があります。
痛みに関して
サーマクールFLXは、従来機よりも患者様の快適性に配慮された機種ですが、無痛の治療ではありません。
照射時には、熱感を伴う疼痛、圧迫感、振動を感じる場合があります。特に、顎下、フェイスライン、頬骨周囲等では疼痛を感じやすい傾向があります。当院では、患者様の反応を確認しながら、熱感、疼痛、皮膚反応に応じて機器設定および手技を調整します。
サーマクールFLXでは、照射時に表皮冷却と振動刺激を併用します。振動刺激は、低閾値機械受容器を介する太径求心性入力を増加させ、脊髄後角における侵害受容入力の伝達を相対的に抑制すると考えられます。この機序は、従来、ゲートコントロールセオリーとして説明されてきました。しかし、現在の疼痛神経科学では、振動による疼痛軽減を脊髄レベルの単純なゲート機構だけで説明するのは不十分であり、局所振動刺激による鎮痛には、後角ニューロンの入力統合、抑制性介在ニューロン、下行性疼痛調節系、注意資源の再配分、体性感覚入力の競合等、複数の階層が関与すると考えられています。
つまり、サーマクールFLXの振動機構は、単に「ゲートを閉じる」機構ではなく、冷却刺激、圧刺激、振動刺激、熱刺激が同時に入力される状況下において、侵害受容の知覚を多階層的に修飾し、結果的に不快感を軽減するための補助機構であると言えます。
また、サーマクールFLXには冷却システムは搭載されており、照射時には表皮冷却も同時に行われます。
これは単なる疼痛緩和のための補助機構ではありません。表皮冷却の本質は、皮膚表面の温度上昇を抑えながら、真皮から皮下脂肪浅層に必要な温度時間履歴を形成することにあります。これは「深部へRFを誘導する」機構というより、RFによる発熱、表皮冷却、熱伝導、血流による熱移送を統合し、治療可能な熱分布を成立させるための境界条件制御と表現するのが正確だと思われます。詳細は下に記載していますので、ご興味がある方はご覧ください(アンカー)。
当院の特徴
本治療は、適応の判断と照射設計によって結果が変わりうる治療です。
当院では、院長が診察、治療設計、照射、アフターケアまで一貫して対応します。
診察では、以下の点を評価します。
● たるみの主体が、皮膚、真皮、皮下脂肪、線維隔壁、SMASのどこにあるのか
● 頬の脂肪量、脂肪のポジション、特に深部脂肪の減量
● フェイスライン、顎下、下顎角、口横の形態
● ほうれい線、マリオネットライン、jowlの重症度
● 皮膚厚・弾性、熱治療への反応性
● 過去のHIFU、RF、スレッド、注入療法等治療歴
● 治療により変化させたい部位と、変化させたくない部位
特に、頬がこけやすい方、脂肪量が少ない方、過去にHIFUやRFを複数回受けている方、スレッドリフトや注入治療歴がある方の場合、特に慎重に照射設計をいたします。
適応に応じて、サーマクールではなく、ソフウェーブ、ウルセラ、XERF等、他治療をご提案する場合もあります。
ダウンタイム・副作用
治療後、一時的に赤み、熱感、軽い腫れ、圧痛、違和感が生じることがあります。多くは数時間から数日で軽快します。
その他、まれに以下のような副作用が生じることがあります。
● 皮下出血
● 蕁麻疹様反応
● 水疱・熱傷・瘡蓋・色素沈着
● 瘢痕
● しびれ、異常知覚
● 皮膚表面の凹凸
● しこり、結節
● 単純ヘルペスの再活性化
サーマクールFLXは低侵襲の治療ですが、組織内に熱を発生させる医療機器です。熱傷、色素沈着、瘢痕、神経障害等のリスクはゼロではありません。
当院では、皮膚状態、照射部位、接触状態、治療中の反応を確認しながら、安全性に配慮して治療を行います。
*直後から、基本的にメイクは可能です(基礎化粧品は院内に常備しています)
*治療当日は、長時間の入浴、サウナ、飲酒、激しい運動は控えてください。
治療を受けられない、または慎重な判断が必要な方
以下に該当する方は、治療をお受けいただけない、または慎重な判断が必要です。
・ペースメーカー、植込み型除細動器、その他の植込み型電子デバイスが身体に留置されている方
・治療部位に金属プレート、金の糸、溶けない糸等がある方
・妊娠中の方、妊娠の可能性がある方
・糖尿病、自己免疫疾患、膠原病等があり、創傷治癒に問題がある方
・ケロイド体質の方
・治療部位に開放創、重度の炎症・感染症がある方
・治療部位に大きな瘢痕組織がある方
・最近、ヒアルロン酸、脂肪注入、スレッドリフト、肌育注射等を受けた方
・成長因子注入等により、結節が生じたり、組織反応が予測しづらい治療歴がある方
・他治療のダウンタイム中、または併発症・トラブルが発生している方
・その他、医師が適応外と判断した場合
過去の治療歴につきましては、診察時に必ずお申し出ください。
Q&A
Q.サーマクールFLXは1回で効果がありますか?
A サーマクールは、基本的に1回の治療で一定の効果が期待できます。
ただし、効果の現れ方には個人差があります。年齢、たるみの程度、皮膚の厚み、皮下脂肪量、骨格、過去の治療歴によって反応は異なります。
治療後の経過を確認しながら、必要に応じて次回治療や他治療との併用を検討します。
Q.ショット数は多いほど効果が高いのでしょうか?
A ショット数は効果量を考えるうえで重要な要素ですが、多ければ多いほどよいというものでもありません。
サーマクールFLXの効果は、ショット数だけでなく、照射部位、照射密度、出力設定、インターフェイスの状態、皮膚の厚み、脂肪量等解剖学的な要因により変化します。
必要な部位に十分な照射を行うことは重要ですが、脂肪量の少ない部位に過剰に照射すると、かえってこけ感や凹凸感が目立つ可能性があります。
当院では、単にショット数を増やすことにより効果を高めるのではなく、照射設計(部位とショット数のバランス、照射ベクトル等)をより重視しています。
Q.出力は高いほど効果が出ますか?
A 出力とは、この場合、機器の画面に表示される術者設定値(トリートメントレベル)のことを指していると思われますが・・・出力を上げれば安全性を損なわずに効果が増すという単純な治療ではありません。
過度な熱刺激は、強い疼痛、赤み、浮腫、熱傷、皮下組織への過剰な反応等のリスクにつながる可能性があります。
表示上の出力を安全な範囲で限界まで上げれば、それで良いというわけではなく、部位ごとの組織厚、接触状態、皮膚反応、疼痛を確認しながら、適切な照射設計により、有効な温度時間履歴を形成することでが重要です。
Q. 麻酔は必要ですか?
A 治療中の熱感や疼痛のフィードバックは、安全に照射するうえで重要な情報になります。そのため、無麻酔で治療することが公式に推奨されています。また、術者の手の感覚で熱傷のリスクを回避できる、という主張もありますが、個人的には、この理屈は成立しないと考えています。
結論を先に述べますと、患者様の熱感に関するフィードバックは単なる快適性評価ではなく、組織内加熱の過剰を検知するための重要な安全情報の一つであり、術者が手で触れて確認できる皮膚表面の熱感は、標的層である真皮深層から皮下組織浅層の温度履歴を直接反映しているわけではないからです。
難しい話をしなくても、RF治療において、皮膚表面の測定温度と患者様の熱感が必ずしも相関しないことは、臨床上、よく経験されることで、患者様の感受性の問題とは言い切れないケースが見受けられます。要は、術者の手の感覚を代替指標とするのは危険です。
さらに申し上げれば、サーマクールFLXには、接触状態の監視、表皮冷却、RF tuning、AccuREPなど、エネルギー伝達の安定性と安全性を高めるための制御機構が備わっています。これらは精巧な安全補助機構ですが、組織内の各深度における温度を直接測定し、その温度を目標値に保つようRF出力を逐次制御する閉ループ型の組織温度制御ではありません。したがって、これらの機構があるからといって、熱傷や過加熱を完全に防止できるとも言えず、患者様のフィードバックを不要とする理由にはなりません。
Q.サーマクール後にメイクや洗顔はできますか?
A 基本的に、洗顔、メイクはをしていただいても問題ございません。
ただし、治療直後の皮膚は一時的に敏感になっていることがあります。強い摩擦、スクラブ、ピーリング作用のある化粧品、レチノール含有製品、トレチノインや高濃度ビタミンC製品等、刺激の強い外用剤は、皮膚の状態に応じてて使用を制限していただく場合もあります。
なお、保湿と紫外線対策は十分に行ってください。
Q.肝斑があってもサーマクールFLXは受けられますか?
A 肝斑があっても、サーマクールFLXの禁忌になるわけではありません。
肝斑は治療に伴う熱刺激、摩擦、炎症等の要因で悪化することが十分考えれます。しかし、私の知る限り、査読済みの文献にそのような報告は見当たりません。ただし、活動性の肝斑がある方や治療後に色素沈着が生じやすい方は、高リスク群として、慎重な判断が求められます。
Q.効果はどれくらいの期間持続しますか?
A サーマクールFLXは1回の治療で比較的長期の効果が期待できる治療です。個人差はありますが、一般的には半年から1年程度を目安に次回治療を検討します。
持続期間は、年齢、皮膚厚、脂肪量、たるみの程度、生活習慣、過去の治療歴によって異なります。
Q.いつ頃から効果を実感できますか?
A.治療直後でも、軽度のタイトニング効果を感じることがありますが、本来の効果は1か月後より現れ始め、3か月前後でピークに達します。このように徐々に効果が現れてくるのは、本治療の熱作用による組織リモデリングの進行過程と相関するため、と考えられています。
Q.頬がこけることはありますか?
A.サーマクールは脂肪細胞を破壊する治療ではありませんが、皮下組織浅層、線維隔壁に熱作用を及ぼすため、頬の脂肪量が少ない方、頬骨下の陥凹が目立つ方、もともとこけが目立ちやすい骨格の方では、治療後、頬がこけた印象になる場合があります。
当院では、骨格、脂肪量、脂肪のポジションを十分に確認し、こけた印象を与えぬよう照射設計を慎重に行います。
ケースによっては、サーマクール以外の治療(ソフウェーブ等)を提案させていただく場合もあります。
Q 治療後に腫れや赤みなどダウンタイムはありますか?
A. 一時的に赤み、熱感、軽い腫れ、違和感が出ることがありますが、多くは数時間から数日で改善します。
治療当日は、長時間の入浴、サウナ、飲酒、激しい運動はお控えください。
その他、まれなトラブルとして、熱傷や皮下出血等が起こりえます。
Q. どのくらいの間隔で受けるのがよいですか?
A. 一般的には半年から1年に1回程度が目安です。
ただし、たるみの程度、治療目的、他治療との併用、過去の治療歴によって個人差はあります。
短い間隔で頻繁に治療をお受けになることは推奨いたしません。
Q.サーマクールFLXは毛穴には効果がないのでしょうか?
A.一定の改善を認めることはあります。
ただし、サーマクールは毛穴治療を主目的とする機器ではありません。よって毛穴、肌質、ニキビ痕、過剰な皮脂分泌等の改善を主目的とする場合には、他の治療をお薦めする場合があります。
Q.サーマクールとHIFU、ソフウェーブは何が違いますか?
A. サーマクールは、RFを用いて真皮から皮下組織浅層にかけて、比較的広範囲に熱作用を与える治療です。
HIFUは、高強度集束超音波を用い、設定した深度の層に点状の熱凝固を形成する治療です。SMAS層や深部支持組織をターゲットにすることが可能です。
ソフウェーブは、真皮中層を中心に加熱する超音波治療です。皮膚の引き締めを主目的とする場合に適しています。
適応に応じて、使い分け、場合によっては併用を検討いたします。
Q. サーマクールの後に行った方がよい治療はありますか?
A. 目的によります。
深部支持組織のたるみが強い場合にはウルセラ、皮膚側の引き締めを重視する場合にはソフウェーブ、肌質改善を目的とする場合にはレーザーやスキンブースターなどを組み合わせることがあります。
基本的には、一つずつ治療を行い、ご自身で反応を確認したうえで、必要に応じてコンビネーション治療を検討するという流れが合理的です。
サーマクールの加熱理論
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当該医療機器は周波数6.78MHzの容量結合型RF機器です。
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RF工学的には、生体組織は導電率と誘電率を併せ持つ不均質な損失性媒質として扱われます。交流電場に対する組織の応答は、複素誘電率または複素導電率によって記述され、発熱はその虚部、あるいは実効導電率として表現される損失項に対応します。つまり、導電損・誘電損、ジュール加熱・誘電加熱のような粗雑な二分法で語られることは、まずありません。
しかし、美容医療の文脈においては、このような残念なレベルの議論が蔓延していますので、あえてわかりやすく、以下二分法も含めた説明をしています。
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この周波数帯は、生体組織に対してはジュール加熱と誘電加熱の両方が関与しますが、主たる加熱メカニズムはジュール加熱です。
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ジュール加熱とは、導電体内の荷電粒子(イオンなど)が電場によって運動し、その結果として分子間衝突が熱エネルギーに変換される現象です。電気抵抗は、このエネルギー損失のマクロ的な表現であり、荷電粒子の運動が周囲との衝突によって妨げられることに起因します。
生体の場合、導電性の担い手は自由電子ではなく、ソディウムやクロライド等のイオンが主ですが、それらが電場の反転に応じて往復運動(振動あるいはドリフト運動)します。その際に、周辺の分子等の構造物に衝突し、そのエネルギー損失が熱に変換されます。
当該周波数においては、生体内イオンが電場の変化に十分追従できるため(マクロ的には電流が流れ)ジュール加熱が生じることになります。
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極性分子(主に水分子)は、交流電場の反転に伴い双極子モーメントの配向を繰り返します。この際、分子の配向運動が電場変化に完全に追従できずに応答の遅れが生じると、入力エネルギーの一部が散逸し、熱として失われます。この電気エネルギーの散逸特性が誘電損失(dielectric loss)であり、実際に生じた熱生成現象を誘電加熱(dielectric heating)と呼びます。
生体内のバルク水の誘電緩和時間が約10ピコ秒、当該機器の周波数の反転周期が約147ナノ秒ですので、水分子はほぼリアルタイムで電場に追従できるため、分子配向遅延に伴うエネルギー散逸は極めて小さいと考えられます(複素誘電率の虚数成分が減衰しており、誘電加熱の寄与が限定的)。
*きわめて単純に整理すると、
イオン(点電荷)の並進運動と衝突によるエネルギー損失→ジュール加熱、
双極子分子の配向過程での回転運動の遅れ(位相差)、分子間相互作用による散逸→誘電加熱。
** 誘電加熱は、電場反転周期と極性分子の誘電緩和時間が一致する周波数帯において最も顕著となります。また、生体内の水に関して誘電緩和時間が約10ピコ秒と書きましたが、結合水や水和層ではより長くなる傾向がありますし、温度など様々な因子に影響を受けます(総体としてみた場合、誘電緩和時間には分布幅があり、厳密な解析には広帯域な誘電分散ーCole–Coleモデル等ーを踏まえた評価が必要となります)。
厳密に言えば、生体組織における誘電応答は双極子緩和のみならず、構造緩和時間や振動緩和時間(条件によりフェムト秒オーダー)、さらにβ分散領域における細胞膜構造に由来する界面分極(Maxwell–Wagner polarization)など、複数の現象が関与します。これらは複素誘電特性に影響を与えるため、理論的には考慮すべき要素です。
しかしながら、実臨床においては、これらの微細な誘電応答が加熱分布に及ぼす影響は限定的であると考えられ、実質的な熱伝達は主に導電率と電場強度に基づくジュール加熱が支配的となります。
***β分散の本質:導電性媒質中の移動性イオンが、低導電性・容量性界面に蓄積することによる界面分極緩和であす。したがって、微視的にはほぼイオン移動に基づきますが、巨視的には誘電分散として記述されます。加熱の観点では、導電損か誘電損かではなく、実効複素アドミタンスの実部に対応する電磁散逸として扱うべきです。
追記:容量性カップリングの意義は、単に「深部へRFを届ける」ことではありません。治療チップ、カップリング媒体、皮膚表面、皮下組織、リターンパッドを含む電気的経路のなかで、接触インピーダンスと組織インピーダンスを管理しながら、RFエネルギーを生体組織へ安定して伝達する点にあります。
サーマクールFLXでは、表皮冷却、チップ構造、カップリング状態、パルスごとのエネルギー制御により、表皮の過剰な温度上昇を抑えつつ、真皮から皮下浅層にかけて温熱作用を及ぼすことを目指します。
また、生体組織において、古典的な意味でのskin effectを主要な機序としてRFの深達性を説明するのは適切ではありません。実際の加熱分布は、導電率、誘電率、組織構造、電極配置、接触条件、冷却条件、熱拡散によって決まります。
cf より専門的なまとめになります。
右はセミプロ向け
なぜ線維隔壁周囲に熱作用が生じやすいのか
顔面の皮下組織は、均質な脂肪塊ではありません。脂肪小葉、線維隔壁、retinacular cutis、血管、結合組織が三次元的に分布する複合組織です。これらの組織は、導電率、誘電率、含水率、熱伝導率が均一ではありません。
RF照射時には、導電率や誘電率の異なる組織境界で、電場と電流密度が再分配されます。脂肪と線維隔壁の界面では、電気物性差と幾何学的異方性により、局所的に電場が強くなる領域が生じえます。
発熱密度は、近似的には以下に比例します。
q∝σ∣E∣²
そのため、電場が局在化する領域では、相対的に発熱が強くなります。
線維隔壁周囲の温熱作用は、単に「線維は導電率が高いから熱くなる」という説明では不十分です。導電率・誘電率の空間勾配、電場分布、線維構造の異方性、表皮冷却、熱拡散を含めた境界条件の問題として理解する必要があります。
この線維隔壁および皮下支持構造への熱作用が、フェイスラインや下顔面の引き締まりに関与すると考えられます。
冷却の意義について
RF治療では、組織内に電磁エネルギーを結合させ、真皮から皮下脂肪浅層にかけて発熱を生じさせますが、その際に最も大きな制約の一つが、皮膚表面および表皮・真皮浅層の過剰な温度上昇です。
したがって、表皮冷却の本質は、皮膚表面の温度上昇を抑えながら、真皮から皮下脂肪浅層に必要な温度時間履歴を形成することにあります。
1. 表皮の熱損傷リスクを下げる
サーマクールFLXでは、RFエネルギーにより組織内に発熱を生じさせます。しかし、表皮、表皮真皮接合部、真皮浅層は熱損傷を受けやすく、過剰な温度上昇は紅斑、水疱、熱傷等の原因となります。
治療チップを介した表皮冷却は、この表層温度の上昇を抑えるために用いられ熱傷のリスクを低減します。
2. 表面を冷却しながら組織内温度を上げる温度分布を形成する
RF治療では、電場分布と組織の損失特性により組織内発熱が生じます。一方、表皮冷却は皮膚表面に熱的境界条件を与え、表層側の温度上昇を抑制します。
その結果、皮膚表面は冷却されて低温に保たれつつ、真皮から皮下脂肪浅層ではRF発熱により温度が上昇するという温度分布が形成されます。このような状態は、逆熱勾配(reverse thermal gradient)と表現されることがあります。
ただし、ここでいう逆熱勾配は、RFエネルギーが深部へ選択的に集中するという意味ではありません。
3. 表皮冷却は電磁場制御ではなく、主として熱境界条件の制御である
表皮冷却により、表層組織の導電率やインピーダンスが変化する可能性はあります(一般的に、生体組織の電気物性は温度、含水量、電解質濃度、角質層の状態、カップリング状態等に影響されます)
しかし、サーマクールFLXの表皮冷却を「表皮インピーダンスを上昇させ、RFエネルギーを表皮から迂回させて深部へ誘導する機構」と説明するのは適切ではありません。
表皮はチップから組織へ至る電気的経路の一部であり、RFの加熱分布は電極構造、カップリング状態、接触条件、組織インピーダンス、導電率・誘電率分布によって決まります。表皮冷却の本質は、電磁場そのものを深部へ誘導することではなく、表面の熱境界条件を制御することにあります。結果的に、表皮損傷を回避し、深部に適切な温度履歴を形成することにつながるのです。
4. 疼痛軽減と治療可能域の拡大
表皮冷却は、疼痛軽減にも寄与します。RF照射時の痛みは、深部熱感、表層の熱刺激、圧刺激、振動刺激、患者様の刺激予測や緊張などが複合して生じます。表皮冷却により表面温度の上昇が抑えられることで、疼痛が軽減されます。
疼痛が軽減されると、治療中の許容性が高まり、必要な照射密度や治療範囲を確保しやすくなります。ただし、これは「高い出力に耐えられるほど効果が高くなる」という単純な相関ではありません。RF治療で重要なことは、疼痛を我慢して出力を上げることではなく、表皮保護、発熱密度、冷却条件、照射密度、温度時間履歴を総合的に制御することです。
*使用機器について
サーマクールは、日本国内において医薬品医療機器等法上の承認を取得していない医療機器です。
当院では、医師の判断のもと、適切な手続きを経て本機器を導入し、自由診療として治療を行っています。
本機器は、米国においてThermage FLX System and AccessoriesとしてFDA 510(k)クリアランスを受けています。なお、FDA 510(k)クリアランスは、日本国内における薬機法上の承認とは異なります。
未承認医療機器を用いた自由診療では、万一副作用や健康被害が生じた場合、公的な救済制度の対象とならない場合があります。
治療の詳細、リスク、代替治療については診察時に説明いたします。
