top of page
​シミ・くすみ・赤みの治療
総説

シミ、くすみ、赤み等は、いずれも色調の問題として自覚されますが、その原因は一つではありません。
日光性色素斑、そばかす・雀卵斑、肝斑、炎症後色素沈着、ADM、脂漏性角化症、毛細血管拡張症、皮膚炎による病的な赤み・紅斑等、複数の病態が重なっていることが少なくありません。

そのため、治療にあたって重要なことは、まず何を治療対象としているのかー主訴と診断ーを定めることです。


たとえば、一見、同じように見える茶色いシミでも、その病態・診断により、治療への反応性、必要な治療回数、治療後の経過、悪化リスク等はケースにより異なります。とくに肝斑や炎症後色素沈着が混在している場合、単純に「旧来のシミ取り治療」を強く行うと、かえって色調の悪化につながる場合があります。

当院では、まず、診察、診断を正確に、部位ごとに行い、内服・外用、機器による治療、スキンケア指導を組み合わせて治療計画を立てています。

​シミ・肝斑・色素沈着等

シミ治療について、患者さんの希望に応じて、大きく分けて二つの治療の進め方・選択があります。


一つは、目立つシミを個別に治療する方法です。
スポット治療:日光性色素斑やそばかす(雀卵斑)のように、境界が明瞭で、診断も比較的容易な色素斑に対しては、レーザー・光治療器によって、薄いかさぶたを形成させるレベルの高フルエンススポット照射により、局所的な改善を図る方法です。
 

もう一つは、顔全体の色むら、くすみ、赤み、質感を総合的に整える方法です。
全顔治療:小さなシミが多数ある場合、全体的なトーンの低下が気になる場合、赤みや毛穴も同時に改善したい場合、また肝斑や色素沈着が存在する場合には、光治療、レーザートーニング、ジェネシス等を組み合わせ、全顔の色調を複数回のの治療で段階的に改善していきます。

日光性色素斑

いわゆる「老人性色素斑」と呼ばれることもある、紫外線の蓄積に関連して生じる茶色~褐色のシミです。
顔、手背、前腕など、日光露光部位に多くみられます。境界が比較的はっきりしていることが多く、スポット治療の対象になりやすいタイプです。

ただし、色調が不均一なもの、境界が不整なもの、急に変化してきたもの、周囲へ滲むように拡大しているもの、隆起・角化・びらん・出血を伴うものについては、メラノーマ、基底細胞がん、日光角化症、Bowen病等の悪性疾患が紛れていることがあるため、慎重な対欧が必要になる場合があります。

そばかす・雀卵斑

遺伝的素因が強く関与する、小さな茶色の色素斑が、頬から鼻周囲にかけて多発する疾患で、思春期から若年成人期にかけて発症します。紫外線曝露により色調が増強しやすく、季節変動を伴うこともあります。レーザー・光治療に反応しやすい一方で、治療後も紫外線曝露により再び濃くなることがあり、遮光を含めた長期的な管理が重要です。

脂漏性角化症

通常のシミのように見えることもありますが、表皮の角化細胞が増殖した良性の角化性病変で、軽度の隆起を伴うバイ委が多い病変です。色調の変化だけでなく、表皮の肥厚や角質の増加が関与しているため、通常の光治療のみでは十分な改善が得られないことがあります。脂漏性角化症が主体と判断される場合には、炭酸ガスレーザー等、他の治療をご提案することがあります。

​肝斑

肝斑は、頬骨部、額、口周囲などに左右対称性に出現することが多い後天性の色素斑です。
紫外線曝露、慢性的な摩擦刺激、炎症反応、女性ホルモンの影響等、複数の因子が関与しているため、いわゆる「シミ取りレーザー」で短期間に解決できる病態ではなく、適切な診断と段階的な治療戦略が求められます。

肝斑治療は、トラネキサム酸などの内服、ハイドロキノンやレチノイドなどの外用、遮光、摩擦を避けるスキンケアが基本となります。レーザートーニングなどの低フルエンス照射を補助的に用いることもありますが、場合によっては増悪や白斑の発症を招く可能性があるため、慎重に治療を進める必要があります。

肝斑は、完全に消失させるというより、増悪因子をコントロールしながら長期的に管理していく色素斑と考えるべきです。

​炎症後色素沈着(PIH)

ニキビ、湿疹、接触皮膚炎、摩擦、熱傷、レーザー治療後等の炎症を契機として生じる色素沈着です。炎症に伴いメラノサイトが活性化され、メラニン産生が亢進することで、褐色調の色素が皮膚に残存します。多くは時間経過とともに自然軽快しますが、数か月から場合によってはそれ以上持続することもあります。

炎症後色素沈着の管理においては、過度な刺激を伴う治療よりも、まず炎症の鎮静化と皮膚バリア機能の回復を優先することが重要です。あわせて、紫外線防御を徹底し、再刺激を避けることが不可欠です。治療を急ぎすぎると新たな炎症を誘発し、結果として色素沈着の遷延化を招く可能性があります。

治療としては、ハイドロキノンやトレチノイン等の外用薬によるメラニン産生の抑制やターンオーバーの促進、また、トラネキサム酸やビタミンC誘導体等の外用も補助的に用いられることがあります。炎症が十分に落ち着いた段階では、ケミカルピーリングや低フルエンスのレーザー・光治療により改善を図ることも可能です。ただし、いずれの治療も皮膚の状態を見極めながら段階的に行う必要があります。

​ADM

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)は、真皮内にメラノサイトが存在することにより生じる色素性病変で、表皮性のシミとは異なる病態を有します。
主に頬部、こめかみ、額外側などに、灰褐色から青灰色調の色調として認められ、光の散乱(チンダル現象)により青みを帯びて見えることが特徴です。日光性色素斑や肝斑と併存することも多く、臨床的鑑別が困難な場合もあります。

ADMが疑われる場合、表在性の色素斑と同一の治療戦略では十分な効果が得られず、治療回数や反応性、治療間隔についても個人差が大きいため、他の色素斑治療とは明確に区別して治療計画を立てる必要があります。

​くすみについて

くすみは単一の疾患概念ではなく、複合的な要因によって生じる視覚的現象です。
主な要因としては、メラニンの増加、炎症後色素沈着、角質肥厚、乾燥、皮膚表面の微細な凹凸、血流低下による赤みの減少、微細なシワによる陰影等が挙げられ、通常は、複数の要因が重なって「顔色が暗く見える」状態が形成されます。

したがって、くすみの評価および治療においては、単にメラニン量のみを標的とするのではなく、肌質、色調の不均一性、血管性の要素、毛孔の状態、含水量、さらには日常的なスキンケア習慣まで含めた多角的なアセスメントが不可欠となります。

赤み・赤ら顔について

赤みも同様に、様々な病態があります。

皮膚の血管の一時的に拡張による赤み、毛細血管が拡張して線状に見えるもの、湿疹やかぶれによる炎症性の赤み、酒さに伴う持続性の赤み、ニキビや皮膚炎の後に生じるいわゆる炎症後紅斑等があります。

毛細血管拡張が主体であれば、光・レーザー治療が選択肢になる場合があります。一方、脂漏性皮膚炎、酒さ、刺激性化粧品や摩擦による炎症が強い場合には、まず炎症をコントロールすることを優先します。また、赤みの中には、紫斑、血管炎、膠原病に伴う紅斑、光線過敏症、感染症等、美容医療の範疇というより、疾患として、専門的な治療が必要な場合があります。

​当院で行っている治療
ライムライト

ライムライトは、キュテラ社のIPL(Intense Pulsed Light)機器の名称で、フォトブライトとも呼ばれています。
シミ、そばかす、くすみ、赤みなど、顔全体の色調を整える目的で使用します。ピンポイントで一つのシミだけを取るというより、全顔の色むらを改善し、肌全体を明るく見せる治療です。

反応したシミは一時的に濃く浮き上がり、薄いかさぶたのようになった後に、1週間ほどで自然に脱落します。治療後赤みが生じる場合委もありますが、数時間~数日程度で落ち着くことが多く、メイクは基本的に治療直後から可能です。

なお、肝斑があるケースでは、照射条件や治療範囲を慎重に判断します。

アキュチップ

アキュチップは、日光性色素斑や毛細血管等に対するスポット治療用の光治療器で、ライムライト治療を行う際、併用する場合があります。

仕様上、個別の色素斑に対する臨床的反応がライムライトよりも強いため、ライムライトでは反応しづらい薄いシミや、毛細血管拡張等が主に適応となります。
 

レーザートーニング

レーザートーニングとは、QスイッチYAGレーザーを低フルエンスで、治療部位に均一に中空照射し、複数の治療セッションで色調を段階的に整える治療です。特に、肝斑、炎症後色素沈着、全顔のくすみ等に対して、セカンドラインの治療として用いることもあります。

概念上、カサブタを形成する治療ではありませんので、色素斑の診断によっては、スポット照射を組み合わせて、治療の効率化を図ります。
*肝斑に対しては、内服や外用、遮光、摩擦を避けるスキンケア等がファーストラインとなります。

ジェネシス

ジェネシスは、ロングパルスYAGレーザーを用い、レーザートーニングのように治療部位に均一に中空照射を行うものです。主に、赤み、毛孔、肌質・ハリ感の改善を目的として行います。
ダウンタイムが比較的少なく、継続治療やメインテナンス治療としても有用な治療です。

治療以前に重要なこと

色素斑治療においては、レーザーや光治療といった機器的介入に意識が向きがちですが、日常のスキンケアは治療反応性および再発抑制に直接的に関与する重要な要素です。

紫外線対策は最も基本かつ不可欠な要素です。単に日焼け止めを塗布するにとどまらず、紫外線強度の高い時間帯(特に午前10時から午後2時頃)を避ける、帽子や日傘などの物理的遮光手段を併用する、屋外活動後の皮膚状態を観察し適切に対応するなど、生活全体を通じて累積紫外線曝露量を低減することを意識すべきです。紫外線はメラノサイトの活性化を介してメラニン産生を促進するのみならず、炎症性サイトカインの誘導や活性酸素種の生成を通じて色素沈着の持続・増悪に寄与します。

また、機械的刺激の回避も極めて重要です。洗顔時の過度な摩擦、タオルによる強い拭き取り、無意識の頻回の接触、過度なマッサージ等は、皮膚バリア機能の破綻を招き、微小炎症(subclinical inflammation)を惹起します。これによりメラノサイト刺激因子(例:α-MSH、ET-1等)の発現が亢進し、肝斑や炎症後色素沈着の増悪因子となり得ます。

したがって、治療効果を最大化するためには、単に積極的な治療を行うだけでなく、皮膚バリア機能を維持し、炎症を誘発する閾値を高く保つような環境を整えることが不可欠です。

治療にあたって

色素斑の治療を行う前には、以下の点について確認・評価をまず行います。

・当該色素斑が腫瘍性病変や自己免疫疾患等による炎症性病変を含まず、美容医療として対応可能か?
・個々の色素斑の診断
・紅斑や皮膚炎など、治療前にコントロールを要する炎症性変化の有無
・直近の日光曝露歴、今後の日光曝露の予定
・光線過敏症の既往、あるいは光線過敏を惹起しうる薬剤の使用状況
・レーザー・光治療後の遷延性炎症後色素沈着の既往
・金の糸、アートメイク、特殊な注入剤、金製剤の内服等、治療反応性や安全性に影響しうる治療歴の有無
・治療後に必要となる遮光、保湿、機械的刺激の回避といったセルフケアを適切に遂行可能であるか

シミ治療の転帰は、暗に照射設定やデバイス選択のみで規定されるものではありません。
治療後における紫外線曝露、摩擦刺激、炎症反応、皮膚バリア機能の破綻といった因子が適切に制御されない場合、トラブルの原因となります​。

bottom of page