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表情ジワ 
ボツリヌストキシン注射

表情ジワは、眉をひそめる、目を細める、額を上げる、口元や顎に力が入る、といった表情筋の動きに伴い顕れ、その反復運動によって、皮膚・皮下組織に同じ方向の力が繰り返し加わることで刻まれたシワに移行します。

つまり、初期には、笑った時や怒った時だけに現れる「動的なシワ」として認識されますが、同じ部位に長期にわたり折れ曲がり応力がかかると、次第に無表情時にも残る「固定されたシワ」へ移行します。

ボツリヌストキシン注射は、この表情筋の過剰な収縮を一時的に弱め、シワを寄りにくくする治療です。
すでに刻まれた深いシワを完全に消す治療ではなく、表情によって生じる皮膚のよれを抑え、シワの進行を予防し、表情の緊張感をやわらげる治療とお考えください。

当院では、世界的に信頼性の高いアラガン社製のボトックスビスタを使用しています。

ボツリヌストキシン製剤は、製剤ごとに力価単位や拡散特性が異なります。
単位数を単純に他製剤と換算することはできません。

そのため、料金だけで比較するのではなく、製剤、投与部位、投与量、医師の判断を含めて治療を選択する必要があります。

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​アラガン社製

当院の治療方針

表情ジワ治療で重要なことは、単純に「筋肉の動きを止める」ことではありません。

表情筋は、顔の印象、目の開き、眉の位置、笑顔の自然さ、口元の動きと密接に関係しています。
そのため、過剰に効かせると、シワは減っても、表情が不自然になることがあります。

当院では、以下を重視して治療設計を行います。

  • シワの位置だけでなく、表情筋の動き方を確認する

  • 額・眉・まぶた・目尻のバランスを見て投与量を決める

  • 必要以上に効かせない

  • 自然な表情を残す

ボツリヌストキシン治療は、注入単位が多ければ多いほどよいという治療ではありません。
むしろ、適切な量で必要な筋活動だけを調整するほうが、自然で上品な仕上がりになる場合が多いと考えています。

​ボツリヌストキシン製剤の作用機序

A型ボツリヌストキシンは、神経終末に結合・内在化された後、軽鎖が細胞質内へ移行し、亜鉛依存性エンドペプチダーゼとしてSNAP-25を特異的に切断します。SNAP-25は、神経終末の形質膜側に局在するQ-SNARE成分であり、syntaxinおよびシナプス小胞膜上のsynaptobrevin/VAMPとともに、神経伝達物質放出に必要なSNARE複合体を形成します。

SNAP-25のC末端側が切断されると、SNARE複合体の形成または安定化が障害され、Ca²⁺依存性のシナプス小胞融合が効率よく進行しなくなります。これにより、神経筋接合部でのアセチルコリン放出が低下し、表情筋の収縮が抑制されます。

 

この作用は、筋肉や神経そのものを破壊するものではありません。神経から筋肉への信号伝達を一時的に低下させる作用であり、時間の経過とともに筋肉の動きは徐々に回復します。

回復には、既存の神経終末におけるSNARE関連蛋白の再合成・機能回復に加え、運動神経終末からの軸索スプラウティング、新たな神経筋接合部の形成、既存接合部の再構築などが関与します。

効果は通常、数日後から徐々に現れ、1〜2週間程度で安定します。
持続期間は一般的に3〜4か月前後ですが、部位、筋肉量、表情の癖、投与量、過去の治療歴によって個人差があります。治療を繰り返すことで、無意識に強く収縮していた表情の癖が弱まり、シワの進行予防につながることもあります。
一方で、短期間に過度な反復投与を行うことは推奨されません。

ボツリヌストキシンは蛋白製剤であるため、頻回投与や短い投与間隔では、中和抗体形成による効果減弱の可能性も考慮する必要があります。当院では、神経筋伝達の回復過程、残存効果、表情筋間の力学的バランス、免疫原性リスクを考慮し、短期間のbooster injectionや不要な高頻度投与は原則として避けています。

適応となる主な部位

額の横ジワ

額の横ジワは、前頭筋の収縮によって生じます。
ただし、前頭筋は眉を挙上する筋肉でもあるため、場合によっては、眉が下がり、まぶたが重く感じることがあります。特に、元来眼瞼下垂傾向がある方、眉を上げて目を開ける癖がある方では、慎重な設計が必要です。額のシワだけを見て注入単位を決めるのではなく、目の開き、眉の位置、上眼瞼の余剰皮膚まで診察の上、判断いたします。

眉間の縦ジワ

眉間のシワは、皺眉筋、鼻根筋、眉毛下制筋などの収縮によって生じます。
不機嫌そうに見える、疲れている、といった印象につながりやすい部位です。

眉間はボツリヌストキシン注入療法の代表的な適応部位ですが、投与位置や薬液の拡散によって眼瞼下垂が生じる可能性があるため、解剖学的に安全な位置へ適切な量を注入する必要があります。

目尻のシワ

目尻のシワは、主に眼輪筋外側部の収縮によって生じます。
笑った時に生じる自然なシワは表情の一部とも言え、完全に消すことを目標にすると、不自然な印象につながります。

当院では、目尻のシワを完全に消すのではなく、過剰な収縮だけを弱め、笑顔の自然さを保つことを重視します。

顎先の梅干しジワ

顎先の凹凸、いわゆる梅干しジワは、オトガイ筋の過緊張によって生じます。
口元を閉じる時に顎先に力が入る方、下顔面に緊張感が出やすい方にみられます。

オトガイ筋の過剰な収縮を弱めることで、顎先の凹凸が改善し、下顔面の審美的調和が得られやすくなります。

エラ・咬筋

咬筋への注射は、表情ジワ治療とは異なります。
咬筋の筋量が多い場合に、筋活動を弱めることで咬筋のボリュームを徐々に減らし、フェイスラインを整える目的(あるいは食いしばりによる筋疲労・歯の摩耗を予防する目的)で行います。

ただし、エラが張って見える原因のすべてが咬筋によるものではありません。
下顎角の形態、脂肪、皮膚のたるみが主因の場合、本治療だけでは十分な効果が得られないことがあります。

また、過剰な治療は、咀嚼時の違和感、頬下部のボリューム低下、たるみ感の増加につながる可能性があります。

ワキ汗・多汗症

ボツリヌストキシンは、表情筋だけでなく、腋窩多汗症の治療にも用いられます。
表情ジワ治療では神経筋接合部におけるアセチルコリン放出を抑制して筋収縮を弱めますが、多汗汗治療では、エクリン汗腺を支配する交感神経終末からのアセチルコリン放出を抑制することで発汗を減少させます。

一般に「交感神経=ノルアドレナリン」と理解されがちですが、体温調節性発汗に関与するエクリン汗腺は、例外的にコリン作動性交感神経の支配を受けます。そのため、A型ボツリヌストキシンによってアセチルコリン放出が抑制されると、汗腺のムスカリン受容体刺激が低下し、発汗量が減少します。

治療は、発汗範囲を確認したうえで、その範囲全体に、等間隔、点状に皮内注射にて薬液を注入します。国内添付文書上においては、重度の原発性腋窩多汗症では片腋窩あたり50単位を10〜15か所に1〜2cm間隔で皮内投与し、再投与間隔は16週以上とされています。

効果は数日〜1週間程度で現れ始め、通常は2週間前後で安定します。
持続期間には個人差がありますが、一般的には4〜9か月程度が目安となります。臨床試験では、治療群の反応持続期間中央値は約6.7か月、すなわち201日と報告されています。ただし、発汗は完全にゼロになるわけではありません。
治療の目的は、汗腺を破壊することではなく、汗腺への神経性刺激を一時的に弱めることです。そのため、時間の経過とともに神経終末機能が回復し、発汗量も徐々に戻ります。効果が減弱した場合には再投与を検討しますが、短期間に過度な反復投与を行うべきではなく、残存効果、投与量、発汗範囲、日常生活への影響を確認したうえで判断いたします。

治療の流れ

1. 診察

診察では、安静時のシワの深さだけでなく、表情を作った際にどの筋がどの程度収縮し、どの方向に皮膚を牽引しているかを確認します。

同時に、拮抗筋・協調筋・代償運動も確認します。たとえば、額のシワが目立つ場合でも、それが単なる前頭筋過活動ではなく、眼瞼下垂傾向や上眼瞼皮膚余剰を代償するための眉毛挙上であることがあります。

このような場合、前頭筋を過度に抑制すると、シワは減っても眉が下がり、まぶたが重くなる可能性があります。

表情ジワは、単一の筋肉の収縮だけで説明できるものではなく、主動筋、拮抗筋、協調筋、代償運動、皮膚・皮下組織の機械的特性が重なって形成されます。そのため治療設計では、シワのラインそのものというよりも、シワを生じさせている運動単位と力学的ベクトルを評価する必要があります。

2. デザイン

投与部位、投与量、注射深度、左右差の補正、薬剤の拡散範囲を考慮して設計します。

人によって、筋腹の位置、筋収縮の強さ、皮膚の厚み、表情の癖は異なります。そのため、定型的なポイントに機械的に注入するのではなく、個々の解剖と動的評価に基づいて投与位置を決定します。

3. 注射

治療は、評価に基づいて設定した部位へ、少量ずつ慎重に注射します。

ボツリヌストキシンは、単に多く注入すればよい結果が得られるという治療ではありません。
目的の筋に必要量を投与し、周囲の筋に対して不要な作用をさせないことが重要です。

注射時には、筋の厚み、走行、皮膚からの深さ、骨性ランドマーク、血管走行、左右差を考慮します。

治療時間は部位数によりますが、比較的短時間で終了します。

4. 経過

ボツリヌストキシンによる効果は注射直後に完成するものではありません。
通常、数日後から効果が現れ始め、1〜2週間程度で安定します。そのため、仕上がりの評価は治療直後ではなく、効果が安定した時期に行います。効果の判定は、表情を作った際の筋収縮、左右差、全体のバランス・自然さを確認します。
追加投与が必要な場合でも、残存効果と全体のバランスを見ながら慎重に判断します。

​ダウンタイム・副作用

注射部位の刺し跡・赤み・腫れ・疼痛については一過性であり、多くは数日以内に消退します。皮下出血が生じることがありますが、2週間程度で消失いたします。効果の左右差や表情の不自然さが生じた場合は、適切な時期に調整をさせていただきます。

額・眉間・眼周囲への投与では、薬剤の拡散により目的外の筋肉に作用が及んだ場合、眼瞼下垂・眉毛下垂・眼瞼浮腫・複視が生じることがあります。いずれも効果の減弱とともに回復しますが、発現した場合は速やかにご連絡ください。

嚥下障害・呼吸困難・全身性筋力低下・アナフィラキシーは極めてまれですが、重篤な転帰をとりうる副作用です。治療後に全身症状を自覚した場合は、直ちに医療機関を受診してください。

​治療をお受けになれない場合

以下に該当する方は、治療をお受けいただけない、または慎重な判断が必要です。

  • 妊娠中の方・妊娠の可能性がある方

  • 授乳中の方

  • ボツリヌストキシン製剤にアレルギーがある方

  • 重症筋無力症など神経筋接合部疾患のある方

  • 筋弛緩薬、筋弛緩作用を有する薬剤を使用中の方

  • 慢性呼吸器疾患のある方

  • 重篤な筋力低下や筋萎縮のある方

  • 医師が適応外と判断した方

また、ボトックスビスタでは、妊娠可能な女性は治療後2回の月経を経るまで、男性は治療後少なくとも3か月間の避妊が必要です。

65歳以上の方については、国内承認上の適応、効果、安全性の観点から慎重な判断が必要です。
当院では、医学的に適応が乏しいと判断した場合、治療を推奨しないことがあります。

​治療費

表情ジワ・表情筋調整1部位 33,000

追加1部位ごと       22,000

エラ・咬筋 標準       66,000

エラ・咬筋 筋量が多い場合  88,000

ワキ汗 標準                       88,000

ワキ汗 広範囲           110,000

※表情ジワ・表情筋調整の対象部位は、額、眉間、目尻、顎先、バニーライン、口角、顎先です。
※部位ごとの適応、筋活動、左右差、必要投与量により、医師が治療範囲と投与量を判断します。
※エラ・咬筋、ワキ汗は必要投与量と治療目的が異なるため、別料金です。
※診察時に治療内容と総額を提示し、同意を得たうえで治療を行います。

​よくある質問

Q. 効果はいつから出ますか?

A. 通常、数日後から徐々に効果が現れます。
1〜2週間程度で安定することが多いため、仕上がりの評価は治療直後ではなく、効果が安定した時期に行います。

Q. 効果はどれくらい続きますか?

A. 一般的に3〜4か月程度です。
ただし、部位、筋肉量、表情筋の過活動・反復的な強い筋収縮、過去の治療歴により個人差があります。

Q. 表情がなくなりませんか?

A. 適切な量と部位で行えば、表情を完全に消えることはありません。
当院では、自然な表情を残すことを重視しています。

本治療は、筋肉を止める治療ではなく、表情筋の過剰な収縮を医学的に調整する治療と言えます。

Q. 深く刻まれたシワも消えますか?

A. ボツリヌストキシンは、表情によって生じる動的なシワに有効です。
無表情でも残る深いシワは、皮膚の構造変化を伴っていることが多く、単独では効果が不十分なことが多いと思われます。

Q. 定期的に続けたほうがよいですか?

A. 表情ジワの進行やシワが刻まれていくのを予防するという点では、適切な間隔で継続する意義があります。
ただし、短期間に過度な反復投与を行うべきではありません。
状態を見ながら、必要な時期に必要な量を投与することが重要です。

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